ナレッジとは?ナレッジマネジメントを実践してみよう
「ナレッジマネジメント」と聞くと、なんとなく「ナレッジを管理すること」だと想像できますが、実際にどう進めていけばよいのでしょうか。本記事では「ナレッジ」「ノウハウ」の違い、ナレッジマネジメント実践の方法や考え方をご紹介しています。
ナレッジとナレッジマネジメントの違いとは?
まず、ビジネスにおけるナレッジとナレッジマネジメントの意味を整理してみましょう。
ナレッジ
- 業務知識や過去の事例、企業が事業に取り組んだ結果得た有益な情報であり、失敗から得られた教訓、コツや手法、法則など
- 経験や学びを体系化し、有用な情報や知識として蓄積したもの
また、ナレッジと似ている言葉に「ノウハウ」という言葉があります。
ノウハウ
- 実体験から培う専門性が高いもの
- 実践や経験に基づいて得られる専門的で具体的なスキルや知識
つまり、ナレッジとノウハウの違いとは、「ナレッジ(経験や学習)」をもとに実際の業務の中で試行錯誤をして身につけたスキルや具体な知識が「ノウハウ」となります。
ナレッジマネジメント
- 組織や個人が持つナレッジを収集・整理・共有・活用することにより、価値を最大化する取り組みのこと。
組織内の知識を経営的に管理し、最大の価値を生み出すことを目指すことから、「知識経営」と言い換えることもできます。
ナレッジマネジメントを実践する方法
では実際にどのようにしてナレッジマネジメントを実践するのかご紹介していきます。
ナレッジマネジメントの進め方と導入時の注意点、効果的に実施する手法をまとめました。
ナレッジマネジメントの進め方
- ナレッジの収集(Capture)
- ナレッジの整理(Organize)
- ナレッジの共有(Share)
- ナレッジの活用(Utilize)
ナレッジマネジメント導入の注意点
- 目的と活用方法をはっきり共有する。
- ツールの周知活動を地道に続ける社員が使いやすいツールを導入する
- 社員の困りごとを集めるナレッジを共有するメリットを提示する
- 社員が求めているナレッジを集める常に最新の情報に更新しておく
「SECI(セキ)モデル」
ナレッジマネジメントを効果的に実施する手法の一つとして、「SECI(セキ)モデル」があります。SECI(セキ)モデルとは暗黙知を形式知に変換し、形式知を暗黙知に変換する場を作るために4つのステップで知識創造を行うことです。
日本の経営学者である竹内輝雄氏によって提唱されました。
SECI(セキ)モデルは、以下の4つのフェーズで構成されています。
- 社会化(Socialization): 個人の経験や知識を共有するプロセスです。例えば、先輩社員の経験を聞く、マンターリング(師弟関係)の形成などが該当します。
- 外部化(Externalization): 個人の知識を形式化し、言語化するプロセスです。 例えば、メモやレポートの作成、ドキュメントの作成などが該当します。
- 結合(Combination): 外部化された知識を組織内で集約し、共有可能な形に結びつけるプロセスです。 例えば、データベースの構築、共有ドキュメントの作成などが該当します。
- 内面化(Internalization): 組織内で共有された知識が個人の知識として内面化されるプロセスです。 例えば、学習やトレーニングを通じて新たなスキルを習得することが該当します。
また、「SECI(セキ)モデル」のプロセスを実施するのに適した「場」が4つあります。この4つの場を社内で用意することで、ナレッジの共有・蓄積が促進されます。
「SECI(セキ)モデル」の4つの場と事例
- 創発場:休憩室やランチ会など、気軽な場での会話から知識を交換
- 対話場:ミーティングなど、本格的なディスカッションを通じた知識の共有
- システム場:ナレッジマネジメントツールなどで、お互いの形式知を結合化
- 実践場:自身の作業スペースで反復練習し、新たに得た形式知を暗黙知へと変換
この「SECI(セキ)モデル」を意識しながらナレッジマネジメントを行うことで、個人のもつ知識や技能をレベルアップさせられます。結果として企業全体の知識資産が増大し、自社ビジネスの推進力となるでしょう。社内のナレッジ共有が活性化することで、業務効率化や生産性向上にもつながると考えられています。
ナレッジデータベースの事例紹介
ナレッジデータベースとは、社内の業務に関する知識・知見を集約して、検索・閲覧できる環境のことを指します。
ナレッジデータベースを構築するメリットとしては「属人化の防止・脱却」、「効率的な知識の共有」、「顧客対応の品質向上」が挙げられます。
ナレッジデータベースの作成方法
ナレッジデータベースはソフトウェアツールを使って作成します。さまざまな種類がありますが、一般的には文書作成ソフトや表計算ソフトを活用する方法と、専門の「ナレッジマネジメントツール」を活用する方法に大別できます。それぞれのツールについて解説します。
- 既存のソフト(Excel、Word)を使用して作成する
- ナレッジマネジメントツール(システム)を導入する
このような身近なソフトは、操作方法がわかりやすくナレッジの入力が簡単であるという利点があります。ナレッジの蓄積が目的であれば、運用しやすく導入もスムーズでしょう。しかし、蓄積されたナレッジをいつでも活用できるように分析したり共有したりするのは、難しいかもしれません。
ナレッジマネジメントツールとは、ナレッジデータベースの構築を含めたナレッジマネジメントそのものを効率的に導入、運用するためのツールです。
検索機能や共有範囲設定など、あらかじめナレッジマネジメントやデータベースの構築や効率的な運用を支援する機能が搭載されていることが多くなります。従って 、前述したExcelやWordを使うよりも容易にナレッジデータベースを構築することができます。
費用は発生しますが、長期的に安定して運用できるナレッジデータベースを構築したいケースでは有用といえるでしょう。
使いやすいナレッジデータベースを作成するポイント
- 誰でも簡単に使えるようにする
- 検索しやすいようにする
- 作っただけではなく育てていく意識を持つ
ナレッジデータベースの基本と作り方について解説しました。ナレッジデータベースはツールや運用を見据えた計画と準備が非常に大切です。
複雑な機能やIT技術が必要なツールを使いこなすのは難易度が高いと言えます。しかし一方では、ExcelやWordなど無料で使える身近なツールで構築するのも、ナレッジデータベースを構築したことがない企業にとっては頓挫してしまうリスクが高まります。
負担できる月額のコストや社内からの問い合わせの内容、マニュアルの有無など自社の現在の環境を見直して、適切なツールの導入を検討してみましょう。
失敗事例と成功事例
最後に、ナレッジデータベース化の失敗事例と成功事例を1例ずつご紹介します。
【失敗事例:膨大なナレッジを整理できず、誰も活用できなくなったB社】
複数の子会社を抱えるB社では、ナレッジマネジメントに複数のグループウェアを導入し、規定のナレッジ共有フローに従って毎日膨大な量のデータを蓄積し続けました。
しかし、ナレッジマネジメント導入から数年後、B社のグループウェアには数千以上ものデータベースが乱立してしまいます。情報整理されず、形式もバラバラな状態のデータベースが完成し、どの情報がどこにあるか誰も参照できなくなりました。
【失敗原因と課題点】
- データの記述や整理のルールが未整備
- 蓄積されたデータが活用不可能になった
- 導入したシステムの機能が乏しかった
B社がナレッジマネジメントに失敗した理由は、ナレッジマネジメントの土台となる理論として大成された「SECIモデル」のうち、連結化のプロセスが欠陥していたことだと考察できます。
B社には「共同化」「表出化」段階で蓄えられた膨大なデータベースを「連結化」する仕組みがありませんでした。その結果、ただ情報が蓄積されるだけのデータベースとなってしまい、誰もその情報を活用できなかったのです。
データベースに蓄えられたナレッジは活用されて初めて意味を持ちます。データを入力して終わりではなく、それを「簡単に取り出し」「組み合わせ」「活用する」仕組みまで考える必要があります。
【成功事例:「お客様からの声」をナレッジ化し、商品開発に役立てる|花王株式会社】
ヘルスケア商品を提供している株式会社花王では、マーケティング・インテリジェンス・システム(MIS)や、「花王エコーシステム」などにより、顧客の声を商品開発やサービス向上に直結させる仕組みを導入しています。
花王ではサポートデスクへ寄せられた顧客からの声をナレッジマネジメントシステム上にデータベース化し、商品開発部がいつでも参照できる状況にしています。
開発部門はナレッジデータベースを参照することで、ささいな顧客ニーズを取りこぼさずに商品開発へ打ち込めます。その結果これまでに無かった便利な商品開発に成功し、「キュキュット クリア泡スプレー」や「アタック」、「バスマジックリン」などに代表されるメガヒット商品を売り出すことに成功しました。
まとめ
「ナレッジとは?ナレッジマネジメントを実践してみよう」と題しまして、ご説明してまいりました。ナレッジマネジメントの実践は、組織や個人の成果を最大化し、持続的な成長を促進するために不可欠です。
経験や知識を体系化し、共有することで、問題解決や意思決定を効率化し、組織全体の生産性向上を実現できます。
さらに、ナレッジの共有は組織の学習と成長を促進し、競争力を高めることに繋がります。
チームの連携とコラボレーションを強化し、情報の共有や意見の交換をスムーズにすることも可能です。
退職や人材の流出による情報の喪失を防ぎ、組織の持続性を確保する助けとなります。ナレッジマネジメントの実践を通じて、組織や個人の成果を最大化し、持続的な成功を達成しましょう。
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参照元URL一覧
https://saichat.jp/faq/knowledge-case/
https://www.knowledgewing.com/kcc/share/method/single67.html
https://it-trend.jp/knowledge_management/article/merit#chapter-1
https://qast.jp/media/what-the-knowledge-management/
https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2021/06/post-492.html